親鸞聖人伝絵 上

第一段


親鸞聖人は、その昔、栄華をきわめた藤原氏の一門の流れをくむ、日野有範の子として1173年この世に生を受けたと伝えられています。

順調に生活できたならば、当然朝廷に仕え、高い身分が保障され、権勢を思いのままに振る舞うこともできたはずが、まさに平家から源氏の時代へと変わる乱世となり、九歳の春に天台宗の大僧正・慈円のもとで髪をおろし出家者となり、範宴と呼ばれるようになりました。

見せかけの幸福のむなしさに気づいた親鸞聖人は、奈良や比叡山の学場を訪れ、広く仏教学の粋を学び、比叡山の横川では恵信僧都(源信)の念仏の修行に励んだのでした。




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