【その5】 お脇掛について教えてください

お内仏の中央に安置された阿弥陀如来像の左右に掛けられているお軸が「お脇掛(わきがけ)」です。 


真宗大谷派(お東さん)のお内仏(ないぶつ)では、阿弥陀如来に向かってその右に「十字名号(帰命尽十方無碍光如来=きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)」、左に「九字名号(南無不可思議光如来=なむふかしぎこうにょらい)」のお軸を掛けるのが一般的です。


十字名号の「帰命尽十方無碍光如来」は、インドの天親(てんじん)菩薩〔世親(せしん)菩薩〕の『浄土論』が出典です。正式な題号は『無量寿経優婆堤舎願生偈むりょうじゅきょううばだいしゃがんしょうげ』といい、『無量寿経』を解釈して偈(うた)と文にあらわしたものです。


九字名号の「南無不可思議光如来」は、中国の曇鸞大師(どんらんだいし)の『讃阿弥陀仏偈』の言葉です。親鸞聖人はこの偈を「無量寿傍経」と了解されています。


聖人は『教行信証』で「それ、真実の教を顕(あらわ)さば、すなわち『大無量寿経』これなり。(中略)如来の本願を説きて、経の宗致(しゅうち)とす。」(聖典152)と述べられています。ご本尊と名号のお脇掛は、阿弥陀如来の本願を説くことをいのちとする『大無量寿経』を体現しているのです。


つまり、「阿弥陀如来」「九字名号」「十字名号」は、お釈迦様の説かれた「経」、インドの論師が経典を解釈した「論」、中国・日本の祖師が経論を註釈した「釈」にそれぞれ由来し、「経・論・釈(きょう・ろん・しゃく)」で仏の教法のすべてをあらわしています。

(因みに、聖人の「親鸞」というお名前は、世親菩薩と曇鸞大師から一字ずついただかれたものと言われています。)



名号の代わりに、親鸞聖人(しんらんしょうにん)と蓮如上人(れんにょしょうにん)の絵像(御影ごえい)を掛ける場合もあります。

お二人は、本願念仏の教えに自ら依(よ)って生き、また一生をかけて人々に広められました。その志願は今もなお、私たちと阿弥陀如来をとりもってくださるかけがえのないご縁となってくださっているのです。


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