池坊仏華・立華の基本形


本堂の仏華の実例を紹介します。
ひん
の準備
【準備】

花瓶(かひん)に剣山をセットします。

@剣山を安定させるための心棒を入れます。(丸木を適当な長さに切り、剣山の底の軸が入るように穴を空け自作したものです。)

A剣山を取り付けます。
【注意点】

花瓶にあったサイズの剣山を使用します。

剣山に心棒がない場合は、丸木の上に剣山を置き、くさびを挿して固定させると良いでしょう。
床の間の「立華」の基本形
『大谷派儀式概要』では、真宗大谷派の仏華は池坊流の立華から発達したと説明されています。しかし、池坊の書物では、神仏の供華が、観賞を目的として発展して「瓶華」となり、さらに仏前の荘厳(しょうごん)を離れて「立華」となり、座敷飾りや床の間に置かれるようになったと解説されています。

したがって、仏華の役枝(真、副、流枝、請、控など)の名称は立華と共通です。

左の例は、真が「除真(のきじん・軒真)」といわれる形で、陽方(中心線より左)へ傾いています。真・行・草でいうと「行」の格にあたる立て方だ、と教わりました。




【補足】
「立華は荘厳(そうごん)なる花形によって、大自然の山岳の景貌を一瓶に顕わしたものとされ、幾つかの草木をもって、これを瓶中に現すことを基本としている。従ってそこに山あり川もあり、谷もあれば町もあり海もある。山にははるかに見上げる高山があり、野末には里があり町があり市がある。町に近く丘陵があって丘をなす。渓流は流れて小川をなし大川となって海に注ぐ。これを一瓶に挿し顕すことを華を立てると称し立てた花を立華と称して現代に至っている。」(岡本光峰『花の心をいける』より)
仏前の「仏華」の参考例
花材を剣山に挿して立てていきます。

ヒバを「真(しん)」「副(そえ)」「流枝(ながし)」にしました。

「真」のヒバは、縦(前後に枝が広がる向き)に用います。横(左右に枝が広がる)にする方がボリュームが出るように思いますが、池坊流では前後に奥行きが出るように立てます。

「副」は斜め後方へ向かうように、「流枝」は真から斜め前方へ向かうように立てます。

今回の流枝は撓(た)めて曲げています。
「真」「副」「流枝」の位置が決まったら、正真や胴になる花を挿していきます。

「正真(しょうしん)」には白菊を2本使いました。
【出来上がり】

「見越(みこし)」にはクジャクソウ(孔雀草)を使いました。

「請(うけ)」にはタマノカンザシ(サンザラシ、ヤブサンモドキの別名あり)の枝。1本ですが、枝が左右に広がっているのを利用して、左側の「副下」などの役も果たしています。

「控(ひかえ)」と「前置(まえおき)」にはナルコユリ(鳴子百合)。

その他、菊(白1本、黄2本)、ユリ(2本)、リンドウ(2本)、ケイトウ(2本)を使っています。
なるべく中心線に寄せて、前後が奥深く見えるように立てると良い、と教わりました。

こうしてみると、流枝を低くしすぎた感じがします。
【参考】

「ちいちの華」のHPに、剣山を用いない生け方(仏花作品工程)や法要の仏華などが詳しく紹介されています。非常に参考になります。
仏華の例 その2
本堂の仏華の場合、流枝が長すぎると、香炉にかかってしまったり反対側の鶴亀にまで達してしまいます。流枝は立華に比べて短くします。
本堂中尊前に荘厳するとこんな感じになります。
生け花教室で、花器に仏華形式で立てた例。




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